書籍を企画する・売り込む・書く―伝わるメディカルのお仕事報告(4)

私はここ10年ほどウェブ系をメインに仕事をしてきたので、出版の世界は何となく縁遠いような感覚になっていました。それがこの夏~秋にかけて、書籍のお話を立て続けにいただいております。よくあるライティング依頼と違って、Joinするタイミングも本によってさまざまで、それぞれに楽しい点や苦労する点があります。自分の記録として、現段階での状況と思っていることをまとめておきます。

1冊目:出版社は決まっているが、企画が決まっていないパターン

ひとつめは、元・同僚が出版社の編集者として転職したつながりで「一緒に本を作ろう」という相談が来ているパターンです。

これまでに色々と企画アイデアを検討してきたなかで、やっと良さそうなテーマが浮かび、協力してくれる先生も見つかったところです。あとは社内の編集会議を通すだけ…!という段階ではあるのですが、そうは問屋が卸さないようで。一般書にするなら、一般の方が興味を持ってくれるような攻めた味付けをしないといけないし、読者を絞った専門的な本にするなら、確実に売れるという根拠が必要になります。

これは当たり前のことではあるのですが、いかんせん、作る側としては難しいところです。普通の人が医療方面に興味を持つこと自体が非日常的なことなので、彼らのインサイトを熱く刺激するような刺激的なタイトル(●●で必ず××が治る、最高の■■法など)が求められます。けれども、医学的に適切な表現かというと、必ずしもそうではない……どころか、医学的には非常識な打ち出し方と言えるでしょう。売れれば誤解を招いてもいいのか? この部分が非常に悩ましいところです。

医学的に(大きな)問題はなく、一般人の潜在的なニーズを引き出せるタイトルと目次。これがコンスタントに作れる能力というのは、出版のみならず広い分野で求められることだと思います。せっかくの機会なので、めげずに気長にチャレンジしていきます。

2冊目:企画は決まっているが、出版社が決まっていないパターン

もう一つは、とある偉業を成し遂げた医師からお声かけいただき「本にまとめたいので協力してくれ」と言われたパターンです。

取り上げるべき事柄は現実に存在していて、複数の関係者の協力も得られてインタビューを実施しているものの、まだどこから出版するか決まっていません。1社だけ売り込みましたが爆死したので、企画書の練り直しをしたうえで他の出版社に売り込みに行きます。内容的にも、いずれどこかの会社が手を挙げてくれるのではないかと期待しています。

このパターンで困るのもやはり「テーマは医療だけど、一般人向けを意識した本」という点です。この企画はテーマだけを見るとマイナーな病気で正直ピンと来なかったり、某地域の記録もしくは自慢話にしか思えなかったりするはずなので、「どんな価値があるのか」「この取り組みからどんな学びがあるのか」を、一般の編集者に分かりやすくプレゼンしないといけません。スタート地点に立つまでが長い……!

こんな状況なので、単純にライティングの仕事だと思うと、まったく採算が取れません。そもそも書籍で儲けようとすること自体が間違っているような気がします。でもね、お金で買えないものをたくさんもらっているんです。それは人脈であったり、物事の考え方であったり、経験であったり、チャンスであったり。長い目で見れば、むしろプラスになると信じています。

3冊目:企画も出版社も決まり、原稿もだいたいできているパターン

3冊目は、2冊目のプライスレスな出会いのなかから、いただいたお話です。

この本は、企画も出版社も決まっていて、さらに原稿もほとんどできているという状態です。私の絡み方としては、足りていない章の執筆をお手伝いすることと、すでに書けている原稿を拝読して、気づいたことにコメントをすること。例えるなら、フルマラソンの最後に辿り着いた競技場で合流して、トラックを1周する分だけ一緒に走る程度の話です。

ですが、一緒に走る人達のレベルが超絶高い。オリンピック選手と観客くらいの圧倒的な違いがあります。本来ならお声かけいただいたことに感謝しつつ、辞退するのが「正しい社会人」の行動かもしれません。……でも、私は知っています。高いレベルの人々の間で揉まれたときに得られる経験値はバカ高いこと、それにつられて自分のレベルがかなり上がることを。

だから、かなりご迷惑をおかけすることを予想しつつも、しれっと平気な顔で引き受けてしまいました。このブログは見ていないはずですが、この場でこっそり謝っておきますm(__)m<がんばります~

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