本日発売!『科学的に正しい認知症予防講義』―伝わるメディカルのブックライティング(4)
本日(2021年3月8日)、2冊目の著書 『科学的に正しい認知症予防講義』 が発売開始となりました!
著者は日本認知症予防学会理事長の浦上克哉先生で、私は執筆協力者という位置づけです。浦上先生にとって私は大学の後輩、そして本書の編集者は私の元同僚という、これまた人のつながりにより生まれた本です。
認知症予防の理論と実践のバランス
本書の特徴は、Lancetに掲載された認知症予防のレビュー論文(=理論)と、とっとり方式認知症予防プログラム(=実践)の両面をバランスよく取り上げることで、玉石混交の認知症予防法のなかでも「取り組む価値の高いもの」を紹介することを目指しました。全体の構成は下記の通りです。
- 講義1:認知症に対して現代医学ができること/できないこと(理論)
- 講義2:発症原因の40%を占める「認知症リスク因子」の減らし方(理論)
- 講義3:「3つの習慣」で認知症リスクを増やさない(実践)
- 講義4:将来の備え編~認知症になっても自分らしく暮らすために(実践)
で、帯は結果的にこういうデザインになりました↓
理論と実践の両面から、科学的に質が担保されているものをベースに記載している本というのは、割とありそうで、実は少ないんです(理論に偏るとか、実践に偏るパターンが多い)。ぜひ多くの方に読んでいただければ幸いです!
執筆とは「端折ったことの責任を持つこと」だった
書き手としては、実践はともかく、理論の部分は気を抜くとすぐに小難しくなってしまいます。原稿の半分以上は、編集者の指摘により書き直しを迫られました。そのときに言われたことがこちら↓
- 読者の興味や集中を逸らさないように書くべし
- どういう意味なのか、その場ですぐに示すべし
- 必要以上のエクスキューズを入れるべからず
これ、非常に重要な示唆でして、これだけで本書を書いた価値があるなと思っています。
執筆時はまず論文などの資料を一通り頭に入れます。そのとき、100の知識とそれぞれの関連や限界などを(一応)把握するわけです。そこから10の内容に絞り込み、一般人でも分かりやすく書くとなったとき、頭のなかでコンフリクトが起こります。その葛藤が文章に現れると、上記のような指摘につながるということなんですよね……
つまり、書き手の「心の弱さ」を指摘されているのと同義なんです。
- 現状で分かっている情報で言い切るのが怖い…
- 自分の解釈が合っているのか自信がない…
- あるデータに対して勝手に意味付けをしてよいものか悩む…
- 後で批判されたときに逃げられるよう、言い訳に使える要素を仕込んでおく
こう考えると、これまで私が書いてきたものは、端折ったことの責任を取らなくて済むようなものが多かったです(特に医療者向けのコンテンツ)。一般向けコンテンツを書くということは、「端折ったことの責任を取る」という行為なのだと、今さらながらに実感しました。
今後、運良くまた一般向けのコンテンツや本などの制作に関わる機会があるならば、もっと強いハートをもってして向かい合いたい……! とはいえ、心臓が強すぎてトンデモ理論に走る人もいますので、ほどほどに恐怖を感じつつも、必要に応じて清水の舞台から飛び降りたいと思います。