思考の流れ ―伝える技術(7)

メディカルライティングのための「伝える技術」、第7回のテーマは「思考の流れ」 です。前回は「メッセージが伝わる文章構成」を作るために「要素間の位置づけ」について解説しました。今回はその要素をどの順番で配置するべきかという点について掘り下げて考えてみます。

読了率を上げるためには、読者の思考を読め

読者の思考の流れを正しく読んだ上で文章構成を組み立てることができれば、長文でも中途離脱を防いで読ませ続けることができます。つまり、読了率を上げることができます。ここでは読者の思考を読んだ上で、それを文章構成に反映させる3つのテクニックを紹介します。

読者の疑問に答え続ける

読者ペルソナとニーズを検討したのであれば、その文章を読む人がどんなことに疑問を持つか想像できるはずです。そして、一つ新しいことを知ったなら、さらなる疑問が湧いてくるのも必定です。

コンテンツの型として「起承転結」や「序破急」という考え方がありますね。上手い文章構成を作るためには、最初(起・序)に読者がその文章を読む動機付けとなる「疑問」を配置することです。基本的に文章を読むというのは面倒な作業ですので、最後まで我慢して読ませるにはここで強く引き付けておくことが重要です!(※これは超重要なので別の記事で詳しく触れる予定です)

最初の疑問が解消したら、次に想起されるであろう疑問について間髪入れずに誘導します。「なぜそれを知る必要があるのか」という理由を述べたりすることで小さな動機付けをして、その解説文を読ませる力を付与します。これを繰り返していけば、長文でも楽に読み進めることができます。読者の思考の流れに沿っているから、余計なエネルギーを使わせずにすっと読んでもらえるのです。

これから語ることを宣言する

文章のなるべく早い段階で、これから何をどの程度のボリュームで語るのか宣言しておくことも重要です。

この記事でも最初に「3つのテクニックを紹介します」と宣言しています。人は先の読めない道を歩むのには苦痛を感じるものです。最初に「まずはこれだけ読んでいってね」と示されれば、安心して読み進められます。

また、3つあると宣言することは、その途中で読むのをやめてしまうのを抑制する効果があると考えています。2つ目まで読んで、あと1つ読めばコンプリートというところで離脱するのは「もったいない」と思わせることができるはずです。なので、私は「3つ」という構成をよく使います。

他にも、これから語ることを事前に知らせる方法はいろいろあると思います。大事なのはいかに読者の心理的ハードルを下げ、興味を持たせるかです。

ときどき、読者を驚かせる

いかに導入で読む動機付けを与え、読者の思考の流れに沿って質疑応答を続けていったとしても、いずれ「飽き」がきます。それに対抗するための方法が「驚かす」ことです。

驚かすとは「起承転結」の転や「序破急」の破に相当します。想定外のこと、予想と真逆なことがあると、脳はびっくりして再度注意を払います。そして、なぜそんなことになるのか知りたくて、続きを読んでしまうこと請け合いです。

私が個人的に考えている目安としては、2000文字に1回くらい驚きを仕込んでおくことです。「理想と現実のギャップ」とか「意外性のあるエピソード」でもいいし、もっと小さな驚きでもいいです。こうすれば、濃淡のない平べったい文章構成になりにくいです。

文章構成を考えるときのイメージは、「起承転結」や「序破急」のレンガを使って、家を組み立てるという感じです。レンガの積み上げ方や順番を誤ると、家が建つ(読了)前に読者が離れていってしまいます。

読者の思考の流れを読んで、自由自在にコントロールできるのがプロ中のプロなんでしょうね。実力のある小説家なんて正にそうですよね。私もそうなれるように、経験を積んでいきたいと思います。

Follow me!