タイトルと導入が命 ―伝える技術(10)

メディカルライティングのための「伝える技術」、第10回のテーマは「タイトルと導入が命」 です。どんなにうまく文章が書けても、読者に読んでもらわないと意味がありませんよね。そのために書き手ができる最大の工夫は、タイトルと導入です!

あなたの記事は「砂浜の1粒」に過ぎない

あなたが書いた記事は、世界でただ一つの価値あるコンテンツです。思い入れも愛着もあるでしょう。その気持ちはよく分かります。――しかし、世の中に存在する多数の文字情報の中では、広大な砂浜にある一粒の砂でしかありません。このような状況下で、あなたの記事はみんなに読んでもらえるでしょうか。否、誰にも見つけられずに埋もれていく可能性の方がはるかに高いでしょう。

読まれる確率を上げる媒体選び

ただ、世の中には多くの人がアクセスする媒体があります。新聞、雑誌、ニュースサイト、フォロワーの多いSNSアカウント等々……。これらに掲載されれば、読まれる確率を大きく上げることができます。

ただし、それでも媒体内で競争があります。媒体運営者としては、人目を引くことが直接・間接的に収入につながることから、なるべく多くの記事を用意しようとします。なぜならウェブサイトなどでは、PV(ページビュー)数がロングテールの状態になることをよく分かっているから。同じ画面に載せられるだけ記事リンクを設置するのが常套手段です。

有名な媒体に載るかどうかは序の口で、本当の闘いはこれからなのです。

記事リスト中でいかに目立つか

同媒体内でずらりと記事が並ぶ中、お行儀よくしていては誰の目にも留まりません。 目を向けてはもらうためには 「私を読んで!」とPRしなければ。そのためにライターができるほぼ唯一のことが「タイトルで目立つ」ことです。

よくできたタイトルは、何か面白い記事はないかと探している読者の目を釘付けにして、思わずクリックをさせてしまいます。タイトルの出来がPV数を左右するというのは、サイト運営に慣れた者なら誰もが知っていることでしょう。

意識して記事タイトルとPVを眺めていると、どんなものが良いタイトルなのか分かってきます。 読者のインサイトをぶっ刺して気持ちを掴みつつも、内容との乖離はなく、(ある程度の)品位も保っているようなタイトルが望ましいですね。

タイトルにこだわらないなんて、もったいない

ときどき、他のライターさんが書いた原稿をチェックする仕事をしているのですが、タイトルにこだわりを感じる原稿に出会う頻度は少ないです。おそらく執筆パワーの98%を本文に費やしてしまって、残りの2%でお行儀よくタイトルを付けているのではないかと想像します。

しかし、手塩にかけて書いた記事が読まれるかどうかはタイトルが握っているのですから、もっとこちらにパワーを振り分けてもいいのではないでしょうか。もっと言うと、タイトルありきで構成を考える、取材するくらいの気持ちでもいいと思います。

私個人は、タイトルと構成に50%の労力を割いています。タイトルが決まれば、気分的にはほぼ書けたも同様で、あとは手を動かすだけです。取材中もタイトルになり得るフレーズや具体例が出てこない限り「まだ撮れ高が足りない」と判断して、できる限り追加の質問やエピソードの聞き取りをするようにしています。

タイトルで引き、導入で確信させよ

読者の目を引いてクリックさせてしまえば、PV1としてカウントされます。PVを目的にしているなら、これでミッションコンプリートです。本文がめっちゃ短くても、タイトルと関係が薄い内容であっても、これ日本語か?レベルの稚拙な文章であっても、PV1はPV1です。おめでとうございます!

……なんてことが許されるわけはないのです。仮に媒体運営者はそれを許しても、人民とお天道様は絶対に許しません。いずれ正義の鉄槌が下ります。……つ~か、下ってました実際に。

まともなライターなら読了100%を目標にせよ

半ば騙しのようなやり口で、タイトルの引きだけでPVをゲットするようなことは、まともなライターは絶対に歓迎しないと思います。自分の大事な原稿を、多くの人に最後まで読んでほしい。それこそライターの本懐ではないですか。目標はPVじゃなくて読了率。読了100%を目指しましょう!

読了率100%を目指すための第一歩が「導入文」です。タイトルで興味を持ってクリックして、導入文で「これは読む必要がある記事だ」と確信してもらって、あとは飽きさせないような構成・文章でもって最後の一文まで連れていきましょう。

我々の書く記事は、しょせんは砂浜の一粒。けれどもその一粒が魅力的に光り輝くようにすれば、必要な人には届きます。タイトルをピッカピカに磨いて、多くの人に見つけてもらいましょう。

※ちなみに当連載のタイトルはごくスタンダードなものにしていますが、これは当サイト内で競合する記事がないのと、一般に広く読んでもらわなくてもいいと考えているからです。

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