so what ? ―伝える技術(1)

メディカルライティングのための「伝える技術」、第1回のテーマは「so what ?」です。so what ? とは「だから何?」という意味で、主張や結論が見えてこない文章を書くなということです。このような文章は、メッセージが伝わらないのはもちろん、読者に無駄な時間を使わせてしまいます。私はメディカルライターになりたての頃、このことを上司に指摘され、背筋が伸びたことを今でも覚えています。

so what ? と思われる文章とは 

では、so what ? と思われる文章は、具体的にどのようなものでしょうか。

『冬になると風邪を引く人が増えてきます。通勤電車やオフィスなどでマスクを着けている姿をよく目にするのではないでしょうか。乾燥は風邪にもお肌にも良くないと言われています。乾燥した冬の日には気を付けたいものです。』

どうでしょう。こんな調子でダラダラ書かれると、何をしたらいいのか、何を伝えたいのかよく分からず、so what ? と思われることは必至です。以下で、この文章を修正してみます。

『冬になると風邪を引く人が増えてきます。通勤電車やオフィスなどでマスクを着けている姿をよく目にするのではないでしょうか。空気が乾燥する冬は、風邪に感染しやすい季節。マスクは喉の乾燥を防ぎ、感染予防になります。』

同じ文字数の文章ですが、修正後は書き手の伝えたいことがよりハッキリとしています。今回の例文はごく一般的な内容なので分かりやすいですが、より複雑な内容になればなるほど、ついso what ? な文章になりやすいので、常に意識しておくべきです(自戒を込めて)。

どうしてso what ? と思われるのか

次に、so what ? と思われる文章を書いてしまう理由について考えてみます。
その最たるものは「伝えるという意思の欠如」なのではないでしょうか。

書き手にどれだけ「伝える意思」があるか、また「情報の伝達に介在しているという当事者意識」があるかどうかは、文章の端々に表れてくると確信しています。前職で何千という既存記事のチェックをしていたとき(≒地獄)は、書き手の伝える意思が入っていない文章は問答無用で評価を下げていました。だって、何を言いたいのか分からないんだもん。まさにso what ? ですよ。

他にも下記のような理由が考えられます。

  • 書き手が内容を理解・咀嚼できていない
  • その文章で伝えたいメッセージを設定していない
  • とにかく文字数を稼ぎたくて、思いついたままに書いている
  • 読み手の利益になるような情報提供をしようと思っていない
  • 事実を単に書き連ねて、それで満足してしまっている

so what ? と思われない文章を書くためには

so what ? と思われない文章、つまり読者にとって有益な情報が具体的に伝わる文章を書くためには、読者ペルソナとニーズを設定し、伝えるべきメッセージをしっかり検討してから書き始めることが大事です。これらを考える前に書き始めると、高確率でso what ? な内容になること請け合いです。

この記事はどんな人が読むのか、その人たちはどのようなニーズを持っているのか、この記事を読んでどうなってほしいのか、そのために発信すべきメッセージはどのようなものか――。これらが決まってから、はじめて原稿用紙なりwordなりを開くべきです。そして、ペルソナ・ニーズ・メッセージから気持ちを離さずに書いていきます。個人的には、モニターを2つ用意しておいて、1つの画面にはword、もう1つの画面には執筆用の資料と、ペルソナ・ニーズ・メッセージを書き込んだメモを常時映すようにしています。

以上、「伝える技術(1)so what ?」でした。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この記事がso what ? と思われていないことを祈っております…(^^;) ご意見・ご感想をぜひこちらまでお寄せください。

Follow me!