『知っておきたい不妊症・不育症ガイド』『在宅死のすすめ方 完全版』―伝わるメディカルのブックライティング(5)
今年は、3冊目の著書 『知っておきたい不妊症・不育症ガイド』 および構成を担当した『在宅死のすすめ方 完全版』が発売となりました!
実はいずれの本も『科学的に正しい認知症予防講義』を読んで編集者が声をかけてくれたというパターンでした。まさに「がんばった仕事が次の仕事を呼んでくる」というヤツを体験させていただき、感謝申し上げます。
知っておきたい不妊症・不育症ガイド
一般的な医療本は「患者や家族」を対象にしたものがほとんどだと思いますが、本書は「当事者の周囲にいる人」すなわち上司や同僚、家族や親戚に読んでいただくことを念頭に執筆しています。
不妊症(妊活しても1年以上妊娠しない)や不育症(流産を繰り返す)の当事者は、本やネット、医療機関で熱心に情報収集をしているはず。問題は、それを理解しない周囲からの(無邪気な)声かけやアドバイスにより、傷つけられることだ――この企画の話を聞いたとき、「それは世の中に絶対に必要な本だ」と確信し、すぐにお引き受けしました。
発案のきっかけとしては、菅・元首相が推進した「不妊症・不育症治療の保険適用拡大」だったそうなのですが、この本が出るまでに退陣したため、このテーマがクローズアップされる機会が失われたと残念に思っています。
しかし、本書の意義は変わらずに価値あるものだと断言します!今後も「高年妊娠・出産」の傾向がしばらく続くでしょうし、ダイバーシティやライフワークバランスを謳う会社なら、マネジメント層に必須の知識であることに変わりはありません。
不妊症・不育症に直面している当事者やパートナーはどのような状況に置かれているのか、周囲はどのように接し、どう配慮すればいいのか、本書を読めば一通り理解できるはずです。本書が「子どもが持てない」と苦しむ人に、さらに追い打ちをかけるような悲しい出来事が少しでも減ることに貢献できれば、こんなに嬉しいことはありません。
なお、時事メディカルにご監修いただいた藤井先生(「不育症」への正しい理解とケアを)と原田先生(「不妊治療」を受けやすい職場環境を)のインタビュー記事が載っています。こちらもご覧いただけましたら幸いです!
在宅死のすすめ方 完全版
上で紹介した本とは打って変わって、こちらは「死の準備」がテーマです。22人の在宅医療の専門家にインタビューしてまとめた書籍ですが、私は全体の構成案を作成しただけで、実際の取材や執筆は他の医療・介護・福祉のライターさん数名で分担して仕上げていただきました。なので、貢献度はかなり低いのですが、せっかくなので紹介させていただきます。
特筆すべきは、日本最大のケアマネジャー会員サイト「ケアマネジメント・オンライン」でウェブアンケートを実施した結果を載せていることです。がん末期などでは訪問診療・看護が入ることが多いのですが、実はこれは全体でみると割合は多くありません。実は、残りの多くのケースである「在宅で療養している要介護高齢者」の生活全般を把握しているのはケアマネジャーなのです。彼らに聞いた「在宅死を望む人へのアドバイス」はきっと参考になると思います!
構成としては、あえて少し専門的な観点のテーマも入れるようにしました。在宅死ではいかに専門家のサポートをうまく得られるかが肝ですが、支援を受ける際の共通認識があると、話がスムーズなのではと思ったからです。
書きにくいテーマもあったかもしれませんが、取材を受けてくださった先生方、そして執筆してくれたライター各位に、心より感謝申し上げます。